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【宇宙ヨット?】折り工学を活用した宇宙開発の事例紹介

作成日:2024年6月5日 更新日: –

宇宙空間で使われる太陽光パネルに、折り紙から発展した技術が使われていることを知っていますか?「折り工学」という言葉は馴染みが無いかもしれませんが、宇宙や防衛に関する分野で様々な研究や活用がなされています。本記事では折り工学の概要から宇宙での活用事例まで解説します。

ス ポ ン サ ー リ ン ク

目次

折り工学とは

折り工学は、折り紙の幾何学的なパターンを利用して、様々な技術に応用される学問です。折り紙の特徴的な機能である折りたたみや立体造形を活かし、プロダクトの輸送効率や試作費用の削減を実現します。

航空宇宙業界では、宇宙の太陽光発電パネルの折り畳み展開技術が活用され、包装資材業界では効率的なパッケージ開発が行われています。折り工学は、紙だけでなく様々な材料に応用可能です。

OUTSENSEでは「折り工学」と呼んでいます。この分野では、材料によらず折り紙の機能を活かしてデザインや効率性を向上させる取り組みが行われています。

折り紙と宇宙の歴史

折り紙の起源は正確には分かっていませんが、室町時代に贈り物や手紙の包装法として折形が広まり、江戸時代には遊戯折り紙として一般化しました。

折り鶴が特に有名で、18世紀初頭の書物にも描かれています。日本で最古の遊戯折り紙の本『秘伝千羽鶴折形』は1797年に出版され、連鶴の折り方が紹介されました。

ヨーロッパでも折り紙が作られており、スペインのパハリータと呼ばれる伝統的な折り紙には小鳥を模した作品があります。また、ドイツの教育家フリードリッヒ・フレーベルは幼児教育の一環として折り紙を取り入れ、これが明治時代に日本にも伝わりました。

日本では幼稚園や小学校で折り紙が教えられ、家庭でも親しまれるようになりました。

一方、近年では宇宙での取り組みにも折り紙が使われています。2012年に米国立科学財団が研究テーマに対して補助金を設けたことも後押しし、宇宙や防衛に関しての研究開発が進んでいます。

日本でも宇宙空間で広がる太陽光パドルや、ソーラーセイル、宇宙空間でのアンテナの開発に活用されています。

参照:PUBLIC RELATIONS OFFICE,「多様な折りの世界」, 2023年6月閲覧

https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202112/202112_01_jp.html

Data-max,「日本発の「折紙工学」産業化に向けて離陸へ(4)」, 2023年6月閲覧
https://www.data-max.co.jp/article/34260

宇宙で活躍する「ミウラ折り」とは

「ミウラ折り」とは、折り紙の一種であり、大きな紙でも対角線を押し引きするだけで展開と収納ができる特徴を持つ折り方です。この折り方は日本の三浦公亮博士によって考案されました。この特徴を活かし、携帯用の地図や観光ガイド、電車の路線図などの製品に利用されています。

実は、このミウラ折りは宇宙空間で展開可能な構造の研究の中で生まれました。1995年3月に打ち上げられた「Space Flyer Unit」(SFU)という宇宙実験・観測用衛星には、ミウラ折りが収納展開方法として採用されました。

ミウラ折りにより、衛星のスペースに太陽光パネルをコンパクトに収納し、容易に展開
することができるようになりました。実際、SFUの太陽光パネルの展開は成功したものの、収納段階では逆折れが発生し、収納を断念したため回収ができず正確な検証ができなかったようです。

参照:宇宙科学研究所 栗木恭一・佐々木進・横田力男,「Space Flyer Unit(SFU)ミッション概要」,1997年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasma/14/3/14_211/_pdf/-char/ja

宇宙ヨットとは?「イカロスミッション」

最近では、日本の研究者が折り紙の技術をさらに宇宙開発に活用しようとしています。その一つが「宇宙ヨット」と呼ばれる燃料を使わず太陽光を利用して進む船です。

地球上のヨットが風を受けて進むのと同様に、宇宙ヨットは太陽光圧を受けて進みます。これは「ソーラーセイル」と呼ばれる大きな正方形の薄い膜を使用することで実現します。この宇宙ヨットは、惑星間の航行などに活用される可能性があり、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2010年に「イカロス」というソーラーセイル実証機を打ち上げ、その収納展開に折り紙の技術が活かされました。

イカロスのセイルは正方形で、一辺が約14メートルであり、非常に薄い膜でできています。イカロスはセイルの太陽光圧を利用して推進し、セイルに貼り付けられた太陽電池からも発電します。セイルは打ち上げ時には折り畳まれ、宇宙空間で回転させることで展開されます。この技術はJAXAによって開発されました。

イカロスの成功により、この技術は今後、小型衛星の薄膜太陽電池パネルなどに順次応用される予定です。また、現在開発が検討されている巨大な薄膜セイルを持つソーラー電力セイル探査機「オケアノス」でも使用される予定です。日本の折り紙の技術は、壮大な宇宙開発に貢献することが期待されています。

参照:PUBLIC RELATIONS OFFICE,「宇宙開発に応用される折り紙の技術」,2023年6月閲覧

https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202112/202112_05_jp.html

Starshadeとは

「スターシェード」とは、NASAが開発している新しい技術であり、他の太陽系外惑星を探索するための画期的な手法です。この技術は、惑星の周りを公転する恒星の明るい光を遮り、恒星の近くに位置する地球型惑星の微弱な光を観測することによって、地球に似た惑星を発見することを目指しています。

スターシェードは、巨大な円盤状の構造物であり、宇宙望遠鏡との組み合わせで使用されます。宇宙望遠鏡は、スターシェードの後ろに配置され、スターシェードが恒星からの光を遮りながら地球型惑星の光を捉える役割を果たします。スターシェードの役割は、恒星の明るい光を極限まで抑えることにあります。これにより、地球型惑星の微弱な光を直接観測することが可能となります。

日本でもこの研究に取り組んでいるチームがあります。日本大学理工学部宇宙構造物システム研究所では、2018年6月に下記のように述べています。

「スターシェードを実現するには,1) 望遠鏡衛星とオカルタ衛星との精密なフォーメーションフライト,2) 適切な形状のオカルタの展開,3) 系外惑星からの微弱な光の分光観測の3つの技術が必要となります。3)については,間接観測技術を適用することで実現可能です.これに対し,1)と2)の技術はまだ実現していません。 そこで,我々の研究室では,系外惑星観測の科学について勉強しながら,オカルタの形状設計法を研究しています。」

参照:NASA,「On the Road to Finding Other Earths」,2023年6月閲覧

https://www.nasa.gov/feature/jpl/on-the-road-to-finding-other-earths

College of Science and Technology, Nihon University Department of Aerospace Engineering,「スターシェードを用いた系外惑星直接観測(2018年6月10日)」,2023年6月閲覧
https://stage.tksc.jaxa.jp/taurus/member/miyazaki/old/topics/FY2018_01/index.html

トランスフォーマー宇宙機とは

「トランスフォーマー宇宙機」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発中の革新的な宇宙探査機です。この宇宙機は、高い機動性と柔軟性を持ち、多様なミッションに適応できる特徴を持っています。

トランスフォーマー宇宙機の特徴的な要素は、可変形構造です。これにより、宇宙機は異なる形態や機能を持つ複数のユニットから構成され、必要に応じて形状や機能を変化させることができます。例えば、探査機や着陸機としての機能を持つユニットや、サンプル回収や地形調査に特化したユニットなどがあります。

この可変形構造により、トランスフォーマー宇宙機は柔軟な探査と多目的な任務遂行が可能となります。さまざまな天体や地形への着陸や探査において、状況に応じて適切な形態に変形し、最適な操作性と性能を発揮します。

また、トランスフォーマー宇宙機は、人工知能(AI)や自律制御システムを活用しています。これにより、環境や任務の変化に迅速に対応し、高度な自己判断や自己制御が可能です。さらに、地球との通信や他の探査機との連携も行い、複数の宇宙機間で情報やデータを共有し合うことができます。

参照:青山学院大学 理工学部 機械創造工学科 准教授 菅原 佳城,「将来の宇宙ロボットへとつながる トランスフォーマー宇宙機」,2023年6月閲覧
https://www.isas.jaxa.jp/feature/forefront/220127.html

まとめ

OUTSENSEでは、「折り工学」を用いて、宇宙で人が恒久的に暮らす世界の実現を目指しています。今後の宇宙開発においても、折りを用いた展開構造が必ず必要な技術になると確信しています。宇宙関連だけでなく、「折り工学」に関する製品開発については、ぜひOUTSENSEにお問い合わせください。

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株式会社OUTSENSEは、「折り工学」を専門とした設計会社です。折りによるデザイン性のや機能性の付与を通して、新規事業開発や製品課題解決をいたします。

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株式会社OUTSENSEは、「折り工学」を専門とした設計会社です。折りによるデザイン性や機能性の付与を通して、新規事業開発や製品課題解決をいたします。本ブログでは、「折り工学」や研究開発、環境技術について発信しています。

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