2022.2.25

製造工程におけるリデュース技術!これに関係する個人・企業の取り組みについても一挙紹介!

リデュース技術とは

リデュース技術とは

持続可能な社会の実現のために必要な、Reduce(リデュース;発生抑制)、Reuse(リユース;再使用)、Recycle(リサイクル;再生利用)の3つのアクションを合わせて「3R」と呼びます。

本記事では「3R」の中でも最も重要とされるリデュースについて、リデュースとは何か、リデュースを実現するために必要な技術は何かという観点で解説します。

リデュースとは、ごみの発生を抑制することや製品をつくる際の資源の消費を減らすことを意味します。つまり、廃棄するもの自体を減らそうという取り組みです。

リデュースを図る技術の総称を「リデュース技術」と呼び、省資源化、長寿命化、製造工程の見直しなど様々な視点からの技術が開発されています。

前回の記事では、リデュースに必要な技術として「省資源化」と「長寿命化」を取り上げましたが、本記事では「製造工程の見直し」によるリデュースの実現について取り上げます。

参照:

環境省、「【特集】3R徹底宣言! | 特集 | ecojin(エコジン)」、https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/feature1/20221116.html

なぜリデュースが必要なのか?

そもそも、なぜリデュースが必要とされているのでしょうか。

産業革命以降に工業化が進み、特に20世紀以降は大量生産・大量消費によって大きく経済が発展してきました。一方で、経済の発展の代償として浮き彫りになってきたのが「ごみ問題」です。大量消費により増え続けた廃棄物は、以下のような様々な問題を引き起こしてきました。

・ゴミを焼却する際に排出されるCO2

・ゴミの運搬に消費される大量のエネルギー

・CO2やエネルギー消費による地球温暖化

・ゴミの埋め立て処分場の逼迫

・海洋プラスチックによる生態系への影響

 

これらの問題を解決しようとした取り組みが「3R」です。1992年の地球環境サミットでは環境問題が大きく取り上げられ、その後1995年以降には国内でも複数の個別リサイクル法が制定されました。そして、2000年には循環型社会形成推進基本法が制定され、3Rの考え方が明文化されました。3Rによって天然資源の消費を抑制し、環境負荷を下げることが、ごみ問題やそれによって引き起こされる地球温暖化といった課題への対策として有効です。その中でも特に重要であるとされているリデュースを行っていくことが環境問題への対策になります。

参照:

環境省、「小冊子『3Rまなびあいブック(大人向け)』序章 なぜ3Rなの?」

https://www.env.go.jp/content/900537896.pdf

必要とされる製造工程の見直し

リデュースを実現するための技術として、皆さんがイメージしやすいのは製品に使われる原材料の省資源化や製品の長寿命化による廃棄物の削減かと思います。しかし、製品に対するリデュース技術の開発だけでなく、製品をつくる製造工程において廃棄物や副産物を削減するリデュース技術や、製造工程を見直すことで不良品の発生率を下げるといった対策も重要です。

3R(スリーアール)と5R(ファイブアール)

Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つのアクションを合わせて「3R」と呼びます。そこにRefuse(リフューズ)、Repair(リペア)を加えたものを「5R」と呼ぶこともあります。

 

それぞれの以下のような取り組みのことをいいます。

・リデュース(発生抑制):廃棄するもの自体を減らす

・リユース(再使用):繰り返し使うことで、廃棄するものを減らす

・リサイクル(再生利用):廃棄物を原材料やエネルギー源として有効に活用する

・リフューズ(断る):要らないものを買わない、もらわない

・リペア(修理):ものを修理して長く使い続ける

 

参照:

江東区、「今日からはじめる5R~5Rでごみを減量しましょう!~」、

https://www.city.koto.lg.jp/381104/kurashi/gomi/5r/14139.html

リユースやリサイクルとの違い

「3R」には、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

リデュースの取り組みは、そもそもごみを出さない、または減らすことを目的としています。この点において、発生したごみをどのように処理するかというリユース、リサイクルとは異なります。ごみを減らすことができればリユース、リサイクルの段階に回るものを削減できるので、3Rの中ではリデュースが最も重要であるとされています。

循環型社会づくりにおけるリデュースの位置づけ

2000年に制定された循環型社会形成推進基本法では、まず製品が廃棄物となることを抑制し(リデュース)、次に発生した廃棄物についてはできるだけ資源として適正に利用し(リサイクル)、最後にどうしても利用できないものは適正に処分することにより、天然資源の消費が抑制され、環境への負担ができる限り低減された循環型社会を実現することを目指しています。

この循環型社会を作る上で、廃棄以降の段階に回る物質の量を減らす取り組みであるリデュースは最も優先度の高い対策であると位置付けられています。

参照:

環境省、「循環型社会への新たな挑戦」、

https://www.env.go.jp/recycle/circul/keikaku/pamph.pdf

企業でのリデュース取り組み事例(製造工程の見直しによる廃棄物の削減などを中心に)

リデュースの取り組みとして、製造工程の見直しによる廃棄物の削減も重要であるということを説明しましたが、実際にはどのような事例があるのでしょうか。

 

例えば、洗浄技術の改善による廃棄物の削減の事例があります。工業製品の製造過程で必要な洗浄作業において、従来は砂や水、プラスチックを噴射して汚染物を除去していました。しかし、ドライアイスの粒を投射する技術によって従来よりも洗浄能力が高くなり、さらにドライアイスが昇華するため汚染物の回収が楽になり、廃棄物が削減されました。

その他には、自動車部品の製造工程において、金属部品の鍛造の際に発生していたバリを削減する製造技術を開発し、スクラップの排出削減、加工の消費エネルギー削減、部品の軽量化を実現した事例があります。

このように製造工程や加工方法を見直すことによってリデュースの実現を目指すことができます。

 

参照:

グリーンテックジャパン、「特長 | ドライアイス洗浄機(ドライアイスブラスト)」

http://www.greentech-japan.co.jp/whatis/feature.html

 

Honda、「Hot! Eyes」

https://www.honda.co.jp/environment/hoteyes/hoteyes236.html

リデュースに関する個人の取り組み

消費者である私たち一人ひとりが取り組むことができるリデュースアクションには次のようなものがあります。

 

  • ごみになるものを買わない、もらわない。
  • 長く使える製品を買う、手入れや修理をしながら長く大切に使う。
  • マイバッグを持って無駄な包装は断る。
  • 詰め替え容器に入った製品や簡易包装の製品を選ぶ。
  • 利用回数の少ないものは、レンタルやシェアリングシステムを利用する。
  • 省資源化設計の製品を選ぶ。

 

引用:環境省、「【特集】3R徹底宣言! | 特集 | ecojin(エコジン)」、https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/feature1/20221116.html

 

ここにあげたアクションを見てみると、買い物の際に少し気をつけるだけで改善できることばかりです。できるだけ無駄なものを買わない、ごみが少ない製品を選ぶという意識がリデュースにつながっていきます。

各国におけるリデュースの取り組み

リデュースや3Rの取り組みは、日本国内のみならず世界各国でも実施されています。各国がどのような取り組みをしているのか、特に近年の事例に注目して見てみましょう。

 

・フランス

フランスでは2020年に廃棄物や資源の浪費を削減し循環型経済をめざす法律が可決され、その中では2040年までに使い捨てプラスチック包装を脱却するために、5年ごとの削減目標を定めました。2025年までの最初の5年間の目標として、使い捨てプラスチックを20%削減、特に不要な物に関しては100%削減を目指すというリデュースの取り組みが示されています。

 

・韓国

韓国環境部とソウル市では、持続可能でカーボンニュートラルな都市を目指した「ゼロ・ソウル」という取り組みを行っており、カフェやレストラン、マーケットなどで使い捨てのカップやプラスチック容器、包装材の削減・廃止を進めており、再生利用可能なカップや容器への転換を進めています。

 

・イギリス

イギリスのUKリサーチイノベーション*1ではプラスチックの廃棄物問題に対処するためにプラスチック包装材の設計、製造、使用、リサイクルに関して、持続可能な解決策となる研究プロジェクトを募集し、計800万ポンドを支援する。研究テーマとしては、消費者行動に関する研究や、新しいビジネスモデルの提案、新しいプラスチック包装材の設計、リサイクルに関する材料・工程の改善など幅広いテーマで募集している。これらの研究により、プラスチック廃棄物を大幅に削減しつつ、サプライチェーン全体でのクリーンな成長を目指す。

 

*1 イギリスのビジネス・エネルギー・産業戦略省が後援している、研究イノベーションを行う政府外公共機関

 

このように、世界各国でも国、研究機関、自治体レベルでの3R、リデュースへの取り組みが進められています。

 

参照:

EICネット、「フランス、使い捨てプラスチック包装の2025年までの削減目標を公表 |環境ニュース[海外]」

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=45382&oversea=1

 

EICネット、「韓国環境部とソウル市、コーヒーショップの使い捨てカップ廃止に向けたプロジェクトを開始 |環境ニュース[海外]」

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=48010&oversea=1

 

EICネット、「イギリスのUKリサーチ・イノベーション、プラスチック廃棄物問題を解決する革新的な研究プロジェクトを公募|環境ニュース[海外]」

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=43425&oversea=1

 

UKRI – UK Research and Innovation

https://www.ukri.org/

ごみを減らすためにはリサイクルだけでなくリデュースも重要

廃棄物を減らして環境負荷を下げる取り組みとしては、リデュースよりもリサイクルについて耳にする機会が多いかもしれません。もちろん、限りある資源を再利用するリサイクルは重要ですが、そもそも使用する資源を少なくすれば生産、廃棄に必要なエネルギーも少なくなり環境負荷の低減に繋がります。

この記事を通してリデュースが重要であり、日常生活の中で気軽に取り組むことができるということを理解していただけましたら幸いです

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