2022.2.25

ブルーカーボンとは?藻場の生態系や地球温暖化との関係性について解説!

ブルーカーボンとは?

ブルーカーボンとは?

ブルーカーボンとは、「藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた(captured)炭素」のことをいいます。

 

2009年10月の国連環境計画(UNEP)の報告書に「ブルーカーボン」が明記され、沿岸植生である海草藻場、湿地・干潟、マングローブ林などが重要な貯蔵の場所になるとされています。ブルーカーボンの特徴としては、海洋植物の光合成によって蓄積された炭素が海底に沈殿することで、長期間に渡って二酸化炭素(CO2)が固定されます。

 

参照:United Nations Environment Programme,Blue carbon: the role of healthy oceans in binding carbon,https://wedocs.unep.org/handle/20.500.11822/7772

グリーンカーボンとブルーカーボン

ブルーカーボンとの対比で挙げられるものにグリーンカーボンがあります。グリーンカーボンとは、「森林や陸上に生息する植物に取り込まれた炭素」のことです。

 

一般的に、植物が光合成をする際に大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収することはよく知られていますが、海藻やマングローブ林などの海洋の植物も成長する際に二酸化炭素(CO2)を吸収するのです。

ブルーカーボン生態系と藻場

ブルーカーボン生態系の一つである藻場には、海草藻場と海藻藻場があります。

 

海草は海底に根を張って体を支え、根から栄養素を吸収して成長する種子植物で、代表的なものとしてアマモやスガモがあります。

 

一方で、海藻は仮根で岩谷生物に着生し、海中から栄養素を吸収して成長します。海藻と異なり、胞子によって繁殖し、根がちぎれても成長を続ける特徴があり、寿命を終えると海底に沈んで炭素を固定します。

ブルーカーボンに関して日本が行っている取り組み

日本は、四方を海に囲まれた海洋立国であり、海岸線の長さが3万5000kmほどあります。そこに生息する藻場は、高度経済成長期の水質悪化や護岸工事によって藻場が減少してきましたが、ブルーカーボンの取り組みが始まるよりも前に、海洋保全を目的とした藻場の再生プロジェクトが行われてきました。

 

国内の具体的な取り組みとして、京都府では昭和53年以降で約22ヘクタールの藻場を消失したとされています。その結果を受けて、平成18年から藻場造成を行っており、失われた藻場を育成するための取り組みとして、砂地に投石を行っています。

 

引用:京都府,海の森(藻場)づくり,https://www.pref.kyoto.jp/suiji/12400013.html

ブルーカーボンに関して企業が行っている取り組み

ブルーカーボンの取り組みは、政府だけでなく、民間企業の間でも始まっています。製鉄企業である日本製鉄株式会社(以下日本製鉄)では、鉄鋼スラグを活用した藻場再生「海の森プロジェクト」を実施しています。鉄鋼スラグは、鉄鉱石から鋼を作り出す還元・精 錬段階で生まれるシリカ(SiO₂)などの鉄以外の成分 が、石灰(CaO)と溶融・結合した副産物です。(引用:鉄鋼スラグ協会,https://www.slg.jp/pdf/fs-148-01.pdf)

 

2004年から実施している北海道増毛町での海藻藻場の造成の成果として、2018年から2022年に吸収及び固定された二酸化炭素(CO2)は49.5トンとなりました。

 

参照:日本製鉄株式会社,鉄鋼スラグを活用した藻場再生「海の森プロジェクト」、新たに6カ所で試験開始 CO2の吸収・固定が期待されるブルーカーボン効果も検証,https://www.nipponsteel.com/news/20221117_200.html

ブルーカーボンの活用とその可能性

本記事では、ブルーカーボンを活用することで、二酸化炭素(CO2)を海底に貯蔵し、地球温暖化の問題、気候変動の問題を抑止する可能性を検討してきました。海洋は陸上よりも多くの二酸化炭素(CO2)を吸収するため、海洋環境の再生は地球温暖化対策に大きな役割を果たすでしょう。

 

また、藻場を育成することで、魚介類の生育拠点となり、SDGsで掲げられている「海の豊かさを守ろう」の実現にもつながる取り組みです。

SDGsに関する関連記事はこちら

運営会社

株式会社OUTSENSEは、「折り工学」を専門とした設計会社です。折りによるデザイン性の付与、機能性の付与を通して、新規事業開発や製品課題解決を実施しております。

関連する記事

おすすめの記事